不動産を売却する前提で相続するケースは増加傾向にありますが、トラブルなく売却するためには相続から売却までの流れを知っておく必要があります。
そのため「相続」と「売却」で押さえておくべきポイントを理解し、必要書類などを準備しながら進めることがおすすめです。
この記事では不動産を相続するまでの流れと相続した不動産を売却する流れについて、解説します。
スピーディーに売却するためのコツについても紹介しますので、参考にしてください。
不動産を相続するまでの流れ
不動産をトラブルなく売却するためには円滑な相続が必須であり、そのためにも正しいステップを把握しておく必要があります。
この章では相続権発生から相続完了までの流れについて、解説します。
法定相続人を確定し、話し合いを行う
法定相続人とは民法で定められた相続する権利を持つ人のことで、配偶者には必ず相続権が発生し次に子ども、直系尊属、兄弟姉妹という順番です。
また法定相続人に応じた法定相続分も次のように設定されており、この設定をベースに法定相続人同士で財産分与について協議し、不動産の所有者を決定します。
法定相続人 | 法定相続分 |
---|---|
配偶者+子ども | 配偶者1/2、子ども1/2 |
配偶者+直系尊属 | 配偶者2/3、直系尊属1/3 |
配偶者+兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 |
こうした協議の結果、不動産の価値と法定相続分が合致しさらに他の法定相続人が合意することで、不動産の相続を受けることができます。
【参考サイト:No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁】
相続登記を行う
不動産の相続が決まると財産分与全体に関する遺産分割協議書を作成し、内容に基づいた相続登記を実施します。
相続登記は令和6年4月1日より相続開始を知った日から3年以内に実施することが義務付けられており、登記しなければ10万円の過料を科せられることもあります。
そのためなるべく早い段階で相続登記を実施すべきですが、相続登記は用意する書類が多く申請書に記載ミスがあるとやり直しの工数がかかってしまいます。
このことからも、相続登記は司法書士などのプロに依頼し確実に実行するのがおすすめです。
【参考サイト:登記申請手続のご案内 (相続登記②/法定相続編) 法務省民事局】
相続税を支払う
相続登記する際には課税額の0.4%を登録免許税として支払うことになりますが、相続した財産が基礎控除を上回る場合は相続税を支払う必要があります。
相続税の基礎控除は3,000万円+法定相続人×600万円で算出することができ、たとえば配偶者と子ども1人の場合は4,200万円が控除額です。
この控除額を上回った場合、相続割合に応じた課税額に税額を掛け合わせることで相続税は算出されます。
また、課税額と税率は次の速算表で確認できるため、相続発生前にチェックしておくことが重要です。
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【参考サイト:No.4155 相続税の税率|国税庁】
相続した不動産を売却する流れ
無事に相続できれば、次は不動産売却に向けた準備を進めていきます。
この章では不動産を売却する流れと各ステップでやっておくべきポイントを解説します。
不動産会社に査定を依頼する
まずは不動産会社に査定を依頼し、どのくらいの金額で売れるのかを把握することからスタートします。
査定は地元の不動産会社に依頼する方法もありますが、多くの売主は不動産一括査定サイトを利用しています。
このサイトは不動産の情報を一度入力するだけで複数の会社に査定を依頼することができ、費用もかからないという特徴があります。
そのため売却検討の初期段階で利用するケースが多いですが、入力した内容が間違っていればそのまま査定されてしまうため注意が必要です。
さらに複数の不動産会社から頻繁に連絡がかかってくるというデメリットもあるため、利用する際には連絡方法と時間を指定しておくことをおすすめします。
なお、相続した不動産が古家で築年数が古い場合は買取業者にも依頼しておくことで、売却できるラインを正確に見極めることができます。
査定額をベースに不動産会社を選定する
複数社から査定額と売却プランの提示を受け、販売実績などをチェックして依頼する不動産会社を選定します。
この際には仲介だけでなく買取の可能性も考慮し、最適な売却方法についてしっかり検討することが大切です。
場合によっては仲介でしばらく物件公開し、一定期間売れなければ買取を選択するという方法もおすすめです。
媒介契約書の種類を決め、サインする
媒介契約書とは不動産仲介業者に販売を依頼する契約書のことで、「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があります。
それぞれ次のような特徴があることから、自分にあった契約形態で締結することがポイントといえます。
契約の種類 | 自己発見取引 | 依頼社数 | 更新期限 | 販売報告 |
---|---|---|---|---|
一般 | 可能 | 複数可能 | なし | なし |
専属媒介 | 可能 | 1社のみ | 最大3ヶ月 | 2週間に1度 |
専属専任 | 不可 | 1社のみ | 最大3ヶ月 | 2週間に1度 |
なお、PRTIMESによると不動産査定サイトのイエウール調べでは約7割の売主が専属専任媒介契約を選択したとのことです。
【参考サイト:【アンケート調査】不動産売却では「専属専任媒介契約」が最多。経験者が回答した各契約形態の満足度は?】
買い手をみつけ、契約する
媒介契約を締結すれば買い手を見つけるため不動産会社は物件資料をインターネットや紙媒体を使って広告し、反響を獲得します。
そして購入申込書が提示されれば内容を確認し、価格や条件に合意すれば契約まで進むことが可能となります。
不動産売買契約書には売主と買主の「約束事」が記載されており、それぞれ条件をクリアできた段階で引き渡しにすすみます。
引渡しを行い、残代金の支払いを受ける
引渡し時には登記識別情報通知書や権利証といった所有権を示す書類を準備する必要があり、紛失している場合は司法書士と事前面談する必要があります。
この場合は工数だけでなく費用もかかってしまうことから、紛失していないか事前に確認しておくべきです。
引渡しの準備が整えば買主から残代金など精算すべき費用の支払いをうけ、取引完了です。
なお、不動産によっては確定申告が必要となるケースもあるため、あらかじめ不動産会社に確認しておくことをおすすめします。
相続した不動産の売却は買取も視野に入れる
不動産の売却はスムーズに進めば問題ないですが、エリアや物件に問題があり販売が長期化してしまうと建物の経年劣化が進んでしまい、売却がさらに難しくなってしまいます。
そこで相続した不動産の築年数が古かったり再建築が難しい物件の場合は、買取の選択がおすすめです。
買取であれば物件の状態やエリアに関係なく売却することができ、さらに仲介手数料もかからないというメリットがあります。
また買取業者によっては残置物を処分することなくそのまま買い取ってもらえるため、不動産の査定段階で買取を考慮しておくべきといえます。