共有持分の計算方法は、不動産購入時は共有者(名義人)ごとの出資額が基準となります。
相続時の共有持分は法定相続分が基本ですが、法的に有効な遺言書が存在する際には、遺言書の内容が優先される形です。
遺産分割協議にて共有分割以外を選択した場合には、共有持分は発生しません。
ここでは、共有持分の計算方法についてご紹介します。
不動産購入時の共有持分の計算方法
不動産購入時の共有持分は、共有者(名義人)ごとの出資額にて割合が決まります。
出資額の割合 | 共有持分 |
---|---|
名義人A:50% 名義人B:50% |
名義人A:2分の1 名義人B:2分の1 |
名義人A:60% 名義人B:40% |
名義人A:5分の3 名義人B:5分の2 |
名義人A:40% 名義人B:30% 名義人C:30% |
名義人A:5分の2 名義人B:10分の3 名義人C:10分の3 |
名義人A:40% 名義人B:30% 名義人C:20% 名義人D:10% |
名義人A:5分の2 名義人B:10分の3 名義人C:5分の1 名義人D:10分の1 |
たとえば、3,000万円の不動産を購入する際、2人の名義人が1,500万円ずつ出資した場合、それぞれの共有持分は2分の1です。
計算方法は次のとおり。
出資額÷購入代金=共有持分
出資額 | 共有持分 |
---|---|
名義人A:1,500万円 名義人B:1,500万円 |
名義人A:2分の1 名義人B:2分の1 |
名義人A:2,000万円 名義人B:1,000万円 |
名義人A:3分の2 名義人B:3分の1 |
名義人A:2,250万円 名義人B:750万円 |
名義人A:4分の3 名義人B:4分の1 |
割り切れない際には繰り上げで調整
共有者ごとの出資額によっては、割り切れない数値が発生するかと思われます。
名義人A:1,750万円
1,750万円÷3,000万円=0.5833333…
名義人B:1,250万円
1,250万÷3,000万円=0.4166666…
上記のように割り切れない際には、どちらかの数値を繰り上げて調整する形です。
名義人A:0.59(100分の59)
名義人B:0.41(100分の41)
名義人Aの共有持分は100分の59、名義人Bの共有持分は100分の41に変更されました。
繰り上げ調整分は贈与税の基礎控除額以内に収めるのがコツ
繰り上げにて調整したことで、名義人Bより名義人Aへの20万円の贈与の扱いとなります。
名義人A:1,750万円⇒1,770万円
名義人B:1,250万円⇒1,230万円
贈与税の基礎控除額は年間110万円のため、20万円の贈与であれば課税対象外です。
贈与税は発生しないため、所轄の税務署に申告する必要もありません。
共有持分の繰り上げ調整をする際には、贈与税の基礎控除額(年間110万円)以内に収めるのがコツです。
住宅ローンごとの共有持分の計算方法
戸建住宅や分譲マンションを購入する際には、金融機関にて住宅ローンを設定するのが一般的です。
選んだ住宅ローンのタイプに応じて、共有持分の計算方法も異なります。
住宅ローン「連帯保証型」
名義人 | 出資額 | 共有持分 |
---|---|---|
夫 | 頭金:1,000万円 ローン:2,000万円 |
4分の3 |
妻 | 頭金:1,000万円 | 4分の1 |
住宅ローン「連帯債務型」
名義人 | 年収 | 共有持分 |
---|---|---|
夫(債務者) | 600万円 | 10分の6 |
妻(連帯債務者) | 400万円 | 10分の4 |
住宅ローン「ペアローン」
名義人 | 出資額 | 共有持分 |
---|---|---|
夫 | 頭金:1,000万円 ローン:3,000万円 |
7分の4 |
妻 | 頭金:1,000万円 ローン:2,000万円 |
7分の3 |
上記の中では「連帯債務型」のみ、名義人ごとの年収が共有持分の計算方法として用いられます。
相続時の共有持分の計算方法
相続時の共有持分の計算方法は、法定相続分が基本となります。
たとえば被相続人の配偶者と、被相続人の子が2人の場合の共有持分は以下のとおりです。
相続人 | 共有持分 |
---|---|
被相続人の配偶者 | 2分の1 |
被相続人の子1 | 4分の1 |
被相続人の子2 | 4分の1 |
被相続人に子が存在しない際には、被相続人の親または兄弟が相続人となります。
相続人 | 共有持分 | |
---|---|---|
被相続人に子が存在しない 被相続人の親がご存命である |
被相続人の配偶者 被相続人の親 |
被相続人の配偶者:3分の2 被相続人の親:3分の1÷人数 |
被相続人に子と親が存在しない 被相続人の兄弟がご存命である |
被相続人の配偶者 被相続人の兄弟 |
被相続人の配偶者:4分の3 被相続人の兄弟:4分の1÷人数 |
相続時の共有持分の計算方法(法的に有効な遺言書がある場合)
法的に有効な遺言書がある場合の共有持分の計算方法は、遺言書に記載された内容が優先されます。
仮に「被相続人の配偶者のみが自宅の所有者となる」と記載されていれば、自宅に対する共有持分は発生しません。
効力としては遺言書>法定相続分ですが、遺言書に特に何も記されていないようであれば、法定相続分に則った共有持分が設定されます。
遺産分割協議にて共有分割以外を選択した場合
遺産分割協議にて共有分割以外を選択した場合には、共有持分が発生することはありません。
共有持分を回避したい方は、現物分割や代償分割や換価分割を選択することをおすすめします。
分割方法 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
現物分割 | 相続人の数に応じた分割 ※相続人2人⇒2分の1 ※相続人3人⇒3分の1 |
・相続人全員に公平な分割が可能 ・相続人ごとの相続税の負担が軽減される ・測量費用などが生じる可能性 |
代償分割 | 相続人のうち1名が土地の所有者になる 他の相続人には現金にて分割 |
・相続人全員に公平な分割が可能 ・土地をそのままの形で残すことができる ・不動産評価額を算定する必要がある |
換価分割 | 土地の売却後に得た売却金額を相続人全員で均等に分ける | ・相続人全員に公平な現金での分割が可能 ・売却の際に所有権移転登記が必須となる ・売却金額によっては譲渡所得税の納付も |
共有分割 | 相続人の全員で土地を共有する ※特定の所有者を決定しない |
・土地をそのままの形で残すことができる ・相続人全員が承諾しないと売却できない |
まとめ
ここまで、共有持分の計算方法について紹介してきました。
購入時は出資額、相続時は法定相続分と捉えておくと良いかもしれません。
共有持分のみの売却は可能ですが、まずはほかの共有者に相談することから始めましょう。