不動産を共有名義で取得するにあたっては、後にさまざまなトラブルが起こりえるリスクを伴います。
そのリスクを軽減する方法として、不動産の賃貸借契約時や売却時に契約書を作成し、いざというときにはその契約書の内容に基づいて行動できるようにしておくことが重要です。
そこで、共有名義で不動産を賃貸借契約や売却するにあたって作成するべき契約書の作成のポイントについて解説します。
共有名義不動産の賃貸借契約時の契約書
一般的に、単独名義の不動産を賃貸借契約する際にも契約書を必要としますが、これは共有名義の不動産であっても同じことです。
その際には、契約内容を確定して後に確認できるようにするために「契約書」という形で残しておくことが重要です。
賃貸借契約時に契約書を作成する目的
賃貸借契約の際に契約書を作成することの基本的な目的は、相互に余計なトラブルを避けるためにあります。
一般的に賃貸借契約は所有者に物件の所有権があり、共有不動産の場合はその所有者が複数人いるため権利関係が少し複雑です。
貸し付けることになる不動産に何らかの影響が及ぶような使い方をされてしまうと、不動産の資産価値に影響を及ぼしたり、余計な修繕費用が発生したりするリスクが発生します。
そのため、そうしたリスクを避けるためにあらかじめ禁止事項を設けるなどすることにより、貸し付ける不動産に余計な悪影響が及ばないようにすることが、賃貸借契約における契約書作成の目的になるのです。
賃貸借契約の契約書を作成する際の注意点
共有不動産を賃貸借契約で貸し出すにあたっては、一般的な賃貸借契約の場合と同様に契約内容を記載すると同様に、共有名義人の中から代表者を選定してそれを契約書に記載しておく必要があります。
また、代表者の情報だけでなく、不動産の共有名義人全員の情報を契約書に掲載しておくことが重要です。
代表者の情報のみの記載する場合だと、共有者同士のトラブルに発展する可能性があることが理由となります。
仮に名義人同士で同意を得ていたとしても、代表者のみ掲載して契約を締結してしまった場合さと、あとから「賃貸借契約を認めていない」と嘘を言う共有者が出てきてしまう可能性があるでしょう。
そのようなトラブルが発生してしまうと、共有名義人だけでなく物件を借りている賃借人も困惑してしまいます。
そのため、かならず賃貸借契約書には共有者全員の情報を掲載しておき、この賃貸契約に共有名義人全員がしっかりと同意していることを証明しておく必要があるのです。
共有名義不動産の売却時の契約書
次に、共有不動産を売却する際の契約書について解説します。
売却には共有名義人全員の同意が必要
単独名義の不動産の売却と、共有名義で所有している不動産の売却で大きく異なる点は、共有不動産の売却では共有名義人全員の同意がなければ売却や譲渡ができないという点です。
単独名義の場合は、基本的に名義人が単独で不動産の処分が可能なのですが、共有名義の場合は名義人全員が同意しないと不動産を処分できません。
そのため、契約書においても共有名義人全員の署名と捺印が必要になる点をきちんと押さえておきましょう。
重要事項説明書の作成
不動産を売買するにあたっては「重要事項説明書」という書類を作成する必要があります。
重要事項説明書とは、宅地建物取引業法にもとづき物件や取引の内容など必要な情報が記載されている書類であり、不動産売買の取引にあたって売買契約書とあわせて重要な書類です。
不動産の売買契約書は資格を有していない個人でも作成できるのですが、重要事項説明書については必ず「宅地建物取引士」が作成する必要があり、宅地建物取引士が作成しなければ重要事項説明書に法的な効力はありません。
持分の売却だけなら単独で可能
共有不動産の売却において最も問題になりやすいのが「共有名義人全員の同意をとりつける」ことです。
共有不動産は共有名義人全員が同意しないと売却できませんが、売却の是非や売却のタイミング、売却する相手などで不満を感じて売却に同意しない共有名義人が出てくることも珍しくありません。
とはいえ、すぐにでも当該不動産を売却して現金化したいという事情もあるでしょう。
その場合は、買い取り業者に自身の持分だけを売却するという選択肢もあります。
持分の売却は単独でも可能であるため、ほかの名義人の同意を必要とせずに売却可能です。
ただし、持分だけの売却は不動産価格の持分相当額よりも安く買われてしまうケースが多いので注意しましょう。
専門家のアドバイスを受けながら進める契約書作成プロセス
最後に、共有不動産の取り扱いにおいて契約書を作成するにあたって、専門家の助力を得ることについて解説します。
弁護士や不動産専門家の役割と貢献
共有不動産の賃貸や売却において、弁護士や不動産業者といった不動産取引の専門家の助力を得て契約書を作成することには、後にトラブルになりにくいというメリットがあります。
本来、賃貸契約書や売買契約書は口約束でも成立しますし、素人が作成しても基本的に問題ありません。
しかし、適当な契約では後に「言った・言わない」問題に発展する可能性があります。
法律や不動産取引の専門家である弁護士や不動産業者のアドバイスでしっかりとした契約書を作成できれば、その内容に基づいて行動できるため万が一トラブルが起きても契約書の内容に基づいてスムーズにトラブルを解消できるでしょう。
契約書の確認と修正のポイント
契約書の作成においては、最初から専門家のサポートを受けながら作成するという方法もありますが、自分たちで作成した契約書を見てもらって必要に応じて修正や追記をするという方法もあります。
それ以前に重要になるのは、共有名義人同士での合意形成でしょう。
不動産取引の専門家のサポートを受けている状態であれば、消極的な共有名義人も納得しやすいのではないでしょうか。
まとめ
共有名義で所有する不動産に関して、賃貸や売却にあたって契約書を作成することはトラブルの発生を予防するために重要です。
契約書の作成は決して簡単なことではありませんので、必要に応じて弁護士や不動産業者などのサポートを受けつつ準備することをおすすめします。