共有持分の放棄は、ほかの共有者に持分放棄の意思を伝えることから始まります。
持分放棄は単独でできますが、登記申請にはほかの共有者からの協力が必要不可欠です。
所有権移転登記を済ませない限り、固定資産税を納めなくてはなりません。
ここでは、共有持分の放棄についてご紹介します。
相続放棄と共有持分の放棄は手続きが異なる
相続放棄は相続の登記を済ませる前に、相続放棄を希望する相続人が行う手続きです。
ご自身が相続人であり、遺産を受け取る権利を持つことを知ってから3ヶ月以内に、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出後、受理された時点で成立します。
相続放棄が認められると遺産のすべてを放棄することになるため、ご自身の持分のみを放棄したい場合には向いていません。
遺産分割協議にて代償分割を選択するなど、ほかの相続人と相談した上で解決に導くやり方も存在します。
分割方法 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
現物分割 | 相続人の数に応じた分割 ※相続人2人⇒2分の1 ※相続人3人⇒3分の1 |
・相続人全員に公平な分割が可能 ・相続人ごとの相続税の負担が軽減される ・測量費用などが生じる可能性 |
代償分割 | 相続人のうち1名が土地の所有者になる 他の相続人には現金にて分割 |
・相続人全員に公平な分割が可能 ・土地をそのままの形で残すことができる ・不動産評価額を算定する必要がある |
換価分割 | 土地の売却後に得た売却金額を相続人全員で均等に分ける | ・相続人全員に公平な現金での分割が可能 ・売却の際に所有権移転登記が必須となる ・売却金額によっては譲渡所得税の納付も |
共有分割 | 相続人の全員で土地を共有する ※特定の所有者を決定しない |
・土地をそのままの形で残すことができる ・相続人全員が承諾しないと売却できない |
一方、共有持分のみの放棄は、相続登記の完了後であれば、いつでも任意のタイミングで行うことが可能です。
ほかの共有者と協力して所有権移転登記を済ませた時点で、共有持分の放棄が完了します。
共有持分の放棄手続きの流れ
共有持分を放棄するためには、以下の流れで手続きを進めていく必要があります。
1.ほかの共有者に持分放棄の意思を伝える
2.所轄の法務局にて所有権移転登記
ほかの共有者に持分放棄の意思を伝える
まずはほかの共有者に、ご自身の持分を放棄する旨を伝えてください。
持分放棄の意思を伝える際、書面を用いると証拠として残すことが可能です。
持分放棄手続きの完了後は、ほかの共有者に放棄した持分が帰属します。
たとえば名義人が2人、それぞれ2分の1ずつの持分割合であれば、持分放棄によって、もうひとりの名義人の単独所有へと切り替わります。
所轄の法務局にて所有権移転登記
ほかの共有者に持分放棄の意思を伝えましたら、所轄の法務局での所有権移転登記に進みます。
所有権移転登記が済まない限り、固定資産税および都市計画税の納付義務が継続することがその理由です。
共有持分放棄の登記申請に必要な書類を以下の表にまとめています。
必要書類など | 内容 |
---|---|
登記申請書 | 所有権移転登記の申請書類です。 法務局のサイトより入手可能 法務局「不動産登記の申請書様式について」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html |
登記原因証明情報 | 登記に至るまでの原因もしくは法律行為を記した書類 原因:相続 法律行為:持分放棄 ※共有持分放棄の場合です |
登記識別情報 | 所轄の法務局より、新たに不動産の登記名義人となった申請者に通知される12桁の英数字が記された書類 |
固定資産評価証明書 | 不動産(土地、建物)の固定資産評価額を証明する書類です。物件の所在する市区町村役場にて入手可能 |
住民票 | 持分放棄をする方以外の共有者(登記権利者)の住民票です。各々の住所地の市区町村役場にて入手可能 |
印鑑証明書 | 共有持分を放棄する方(登記義務者)の印鑑証明 住所地の市区町村役場にて入手可能 |
本人確認書類 | 不動産の共有者全員の本人確認書類です。 運転免許証などの写しが該当します。 |
印鑑 | 共有持分を放棄する方(登記義務者)およびほかの共有者(登記権利者)の印鑑です。 登記義務者:実印 登記権利者:認印 |
委任状 | 委任者本人が作成した委任状です。 遠方にお住まいの方などが持分放棄する際に使用する可能性があります。 |
登録免許税 | 所有権移転登記の際、法務局窓口に収入印紙にて納める税金です。 登録免許税=不動産価格×2% |
登記引取請求訴訟
ほかの共有者より、共有持分放棄手続きの協力が得られない場合、ほかの共有者に対して登記引取請求訴訟を起こすことも可能です。
登記引取請求が裁判所に認められた際には、単独での共有持分登記申請ができるようになります。
共有持分放棄で発生する税金
共有持分放棄で発生する税金として、以下の3つがあげられます。
・登録免許税
・固定資産税/都市計画税
・贈与税
登録免許税
共有持分放棄の所有権移転登記の際、法務局の窓口に納める税金です。
別途購入した収入印紙にて支払います。
共有持分放棄の登録免許税=固定資産評価額×2%×持分割合
固定資産税/都市計画税
固定資産税/都市計画税は、その年の1月1日時点の不動産の所有者に対して課される地方税の一種です。
共有持分放棄のタイミングによっては、日割り計算にて固定資産税/都市計画税を納める必要があります。
共有持分の不動産の固定資産税/都市計画税は、共有者の代表者に対して請求されることがほとんどです。
後々のトラブルを回避するためにも、固定資産税/都市計画税を代表者に支払っておきましょう。
贈与税
放棄した共有持分を取得した共有者には、贈与税が課せられる可能性があります。
放棄した持分が年間控除額110万円を超える固定資産評価額の際、贈与税の納付義務が生じる点は共有者に伝えておきたいところです。
まとめ
ここまで、共有持分の放棄について紹介してきました。
共有持分の放棄手続きには、ほかの共有者との協力が必要不可欠です。
事前にきちんと相談した上で、共有持分を放棄するか?否か?を選択することをおすすめします。