相続で受け継いだ不動産の中には、共有持分の空き家も存在します。
共有持分とは、複数の名義人ごとの所有権の割合です。
老朽化した空き家を放置しておくと、行政による処分が科せられるリスクも。
トラブルを回避するためには、売却などの早急な対応が必須です。
ここでは、共有持分の空き家を売却するためのコツと注意点をご紹介します。
共有持分の空き家を売却するためのコツ
共有持分の空き家を売却するためのコツとして、次の3つが想定されます。
・名義人全員の同意を得た後に売却
・ほかの名義人に自身の共有持分を譲渡
・不動産会社による買取
名義人全員の同意を得た後に売却
名義人全員の同意を得た後の売却は、最も高額な売却価格が期待できる方法です。
交通アクセスが良好な地域の空き家の場合、短期間での取引の成立も考えられます。
まずは所轄の法務局にて、空き家の登記事項証明書(登記簿謄本)を入手しましょう。
登記事項証明書には空き家の名義人と、名義人ごとの共有持分が記載されています。
名義人の数や所在地によっては、手間と時間がかかるかもしれません。
共有持分に応じた売却金額の分配がカギとなるでしょう。
ほかの名義人に自身の共有持分を譲渡
ほかの名義人に自身の共有持分を譲渡するのもひとつのやり方です。
空き家に関する権利も譲渡することになるため、建物の解体などの負担から逃れられるかもしれません。
譲渡された名義人にとっても共有持分が増えることにつながります。
空き家をアパートなどに建て替えた場合には、継続的な不動産収入が期待できるでしょう。
譲渡の際には名義人がまとまった金額を用意できるか?否か?がポイントです。
相続税路線価や公示価格、固定資産税評価額を用いておおまかな価格を算出しておきましょう。
不動産会社による買取
不動産会社の中には、空き家を含めた共有持分の買取を行うところも見受けられます。
取引実績の豊富な不動産会社を選ぶことが重要です。
ただし買取の場合、通常の売却よりも割安になるのは否めません。
早急な現金化を求める方に向いている方法です。
買取に臨む前には、必ずほかの名義人より許可を得てください。
少なくとも連絡や相談をしておいたほうが無難です。
共有持分の空き家を売却する際の注意点
共有持分の空き家を売却する際には、次の5つの項目をチェックしていきましょう。
・空き家の名義人と共有持分の確認
・空き家が再建築不可物件でないか?
・建物の解体は慎重に
・解体費用の負担
・空き家の売却後の確定申告
空き家の名義人と共有持分の確認
共有持分は複数の名義人が存在します。
空き家を売却する際には、すべての名義人からの同意が必須です。
名義人や共有持分の確認のために、空き家が所在する管轄の法務局にて、空き家の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得しましょう。
インターネットを利用したオンライン申請も選択可能です。
空き家が再建築不可物件でないか?
共有持分の空き家が再建築不可物件の場合、通常の売却よりも成立が難しくなります。
再建築不可物件とは、建築基準法の接道義務を満たしていない建物の総称です。
幅員4メートルの道路に対して、敷地が2メートル以上接していない場合、再建築不可物件に指定されてしまいます。
再建築不可物件は建て替えや増改築が認められません。
一定範囲内のリフォームやリノベーションのみ可能です。
詳しくは空き家の所在する市町村役場の「建築課」や「建築指導課」、または「道路課」に訊ねてみることをおすすめします。
窓口を訪れる際には、登記事項証明書(登記簿謄本)や公図、地積測量図や建物図面を持参するとスムーズな手続きにつながるでしょう。
登記事項証明書や公図、地積測量図や建物図面は所轄の法務局にて入手可能(有料)です。
建物の解体は慎重に
共有持分の空き家の活用方法のひとつに、建物の解体後の駐車場もしくは駐輪場の運営があげられます。
もしくは更地にしてから売却するパターンも選択可能です。
ただし、土地から建物が撤去された場合、固定資産税や都市計画税の軽減措置の対象から除外されてしまいます。
税金の名称 | 軽減措置 | |
---|---|---|
小規模住宅用地 ※200㎡以下 |
固定資産税 | 固定資産税評価額×6分の1 |
小規模住宅用地 ※200㎡以下 |
都市計画税 | 固定資産税評価額×3分の1 |
一般住宅用地 ※200㎡超 |
固定資産税 | 固定資産税評価額×3分の1 |
一般住宅用地 ※200㎡超 |
都市計画税 | 固定資産税評価額×3分の2 |
建物を有していない土地の固定資産税、および都市計画税の計算式は以下のとおり。
固定資産税評価額×1.4(標準税率)=固定資産税額
固定資産税評価額×0.3(標準税率)=都市計画税額
少なくとも空き家の売却が成立するまでは、建物の解体は慎重に検討したほうが良いかもしれません。
解体費用の負担
空き家の売却が成立した後には、建物の解体が実施されます。
その際の解体費用を誰が、どのように負担するのか?を決めておくと良いでしょう。
詳細については、仲介を依頼する不動産会社の担当者に相談することをおすすめします。
空き家の売却後の確定申告
空き家の売却後に売却益が生じた際には、所得税の確定申告が義務付けられます。
課税譲渡所得金額=収入-(取得費+経費)-特別控除額
譲渡所得税は空き家の所有期間に応じて税率が異なります。
長期譲渡所得 | 短期譲渡所得 | |
---|---|---|
不動産の所有期間 | 5年超 | 5年以内 |
税率 | 20.315% ※所得税:15% ※復興特別所得税:0.315% ※住民税:5% |
39.63% ※所得税:30% ※復興特別所得税:0.63% ※住民税:9% |
売却益が得られなかった際にも確定申告を済ませることで、給与所得や事業所得との損益通算が適用されるケースがあります。
共有持分の名義人にもしっかりと伝えておきましょう。
まとめ
ここまで、共有持分の空き家を売却するコツと注意点を紹介してきました。
特に名義人の数が多い場合、それぞれの意見をまとめるのに苦労するかもしれません。
いずれにせよ、名義人同士の関係性で大きく左右されるのは確かです。
問題の解決が難しい場合には、法律や不動産の専門家に相談してみることをおすすめします。