共有持分とは複数の名義人で所有している不動産に対する、名義人ごとの所有権の割合です。
共有持分は購入時の名義人ごとの出資額で決定します。
名義人が2名だからといって50%ずつとは限りません。
ここでは共有持分のアパートで得られる3つのメリットと、生じる2つのデメリットについてご紹介します。
共有持分の決まり方
共有持分はアパートなどの不動産の購入時、もしくは相続での遺産分割にて決定します。
単純に名義人の数で決まるわけではありません。
共有持分は不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されています。
所轄の法務局にて確認することが可能です。(有料)
法務局ではインターネットを用いた「オンライン申請」も受け付けています。
不動産の購入時
不動産の購入時の共有持分は、出資額に応じて決まります。
出資額の割合 | 共有持分 |
---|---|
名義人A:50% 名義人B:50% |
名義人A:2分の1 名義人B:2分の1 |
名義人A:60% 名義人B:40% |
名義人A:5分の3 名義人B:5分の2 |
名義人A:40% 名義人B:30% 名義人C:30% |
名義人A:5分の2 名義人B:10分の3 名義人C:10分の3 |
名義人A:40% 名義人B:30% 名義人C:20% 名義人D:10% |
名義人A:5分の2 名義人B:10分の3 名義人C:5分の1 名義人D:10分の1 |
不動産の相続時
不動産の相続時の共有持分は遺産分割がカギとなります。
分割方法 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
現物分割 | 相続人の数に応じた分割 ※相続人2人⇒2分の1 ※相続人3人⇒3分の1 |
・相続人全員に公平な分割が可能 ・相続人ごとの相続税の負担が軽減される ・測量費用などが生じる可能性 |
代償分割 | 相続人のうち1名が土地の所有者になる 他の相続人には現金にて分割 |
・相続人全員に公平な分割が可能 ・土地をそのままの形で残すことができる ・不動産評価額を算定する必要がある |
換価分割 | 土地の売却後に得た売却金額を相続人全員で均等に分ける | ・相続人全員に公平な現金での分割が可能 ・売却の際に所有権移転登記が必須となる ・売却金額によっては譲渡所得税の納付も |
共有分割 | 相続人の全員で土地を共有する ※特定の所有者を決定しない |
・土地をそのままの形で残すことができる ・相続人全員が承諾しないと売却できない |
上記のうち、共有分割を選択した際に共有持分が定められます。
相続人が2名であれば、2分の1ずつの共有持分となるのが一般的です。
ただし、法的に有効な遺言書が存在する場合にはその限りではありません。
共有持分のアパートで得られる3つのメリット
共有持分のアパートで得られるメリットとして、以下の3つがあげられます。
・高額な資金を準備しやすい
・管理業務の分担
・固定資産税や都市計画税を分担できる
高額な資金を準備しやすい
共有持分にてアパートを購入する際、複数の名義人による出資となります。
仮に1名の名義人が2,000万円まで出資可能な場合、名義人が増えるごとに3,000万円や4,000万円以上の物件が購入できる計算です。
住宅ローンの融資金額は年収が査定に関係するため、共働きの夫婦がペアローンにて融資を受けることで、より多くの融資金額が期待できます。
管理業務の分担
共有持分のアパートには管理業務を分担できるメリットも含まれています。
項目 | 内容 |
---|---|
入居者の募集関連 | ・不動産会社への入居者募集依頼 ・入居者候補による内見 ・入居者候補との面談 ・入居者との賃貸借契約 |
賃料の受け取り | ・入居者より手渡しで賃料を受け取る ※銀行振込の場合には通帳の明細を確認 ・賃料の遅滞の場合には入居者への督促 |
建物の管理 | ・庭や共有部の清掃 ・ゴミ収集スペースの管理 ・入居者同士を含む近隣トラブルへの対応 ・設備や機器のメンテナンス ・建物や設備の修繕(大規模修繕など) |
入居者の契約更新時 | ・入居者との契約更新手続き ・更新料の受け取り |
入居者の退去時 | ・入居者との退去手続き ・入居者への敷金の返還 ・原状回復工事 ・ハウスクリーニング |
固定資産税や都市計画税を分担できる
共有持分のアパートは、固定資産税や都市計画税を分担できる点もメリットのひとつです。
固定資産税や都市計画税は、アパートの建物と土地に対して課せられます。
固定資産税評価額×1.4(標準税率)=固定資産税額
固定資産税評価額×0.3(標準税率)=都市計画税額
名義人ごとの共有持分に合わせた固定資産税や都市計画税の納付が可能です。
実際には代表者が一旦全額を納めた後に、それぞれの名義人に対して共有持分ごとの税額を請求することになります。
共有持分のアパートに生じる2つのデメリット
共有持分には管理業務や税金の分担などのメリットが得られる反面、次の2つのデメリットが生じる可能性があります。
・追加融資や売却の際にすべての名義人の同意が必要
・相続時に権利関係が複雑化する
追加融資や売却の際にすべての名義人の同意が必要
共有持分のアパートは追加融資や売却の際に、すべての名義人の同意が必要となります。
代表者だからといって、自由に売却することは認められていません。
不動産の一部だけでは抵当権の設定ができないため、追加融資を受けることも難しいでしょう。
相続時に権利関係が複雑化する
共有持分は相続時に権利関係が複雑化する点も想定しておきたいところです。
たとえば2人の名義人のうち1名が鬼籍に入った場合、亡くなった方の配偶者や子孫に共有持分が相続されます。
相続人の数に応じて共有持分が設定されるため、時間の経過とともに名義人が増加することも。
ほかの名義人の存在やそれぞれの共有持分をきちんと伝えておくことが、将来のトラブルを回避するコツです。
まとめ
ここまで、共有持分のアパートで得られる3つのメリットと生じる2つのデメリットについて紹介してきました。
共有持分は名義人同士の関係性がカギとなります。
良好な関係を維持することが共有持分のメリットを享受するための必須項目です。
デメリットも理解した上で、共有持分を選択することをおすすめします。