共有持分のアパートを売却する際、大まかに分けて3つの選択肢が存在します。
アパート一棟の売却や第三者への共有持分のみの売却、そしてほかの共有者への共有持分の売却です。
ここでは、共有持分のアパートを売却するための3つの選択肢についてご紹介します。
共有持分のアパート一棟を売却
共有持分の不動産には複数の名義人が登記されています。
共有持分とは、名義人ごとの不動産の所有権の割合を示す言葉です。
共有持分の決まり方は、物件の購入時と物件の相続で異なります。
3つの選択肢の中で最も多くの売却金額が期待できるのが、共有持分のアパート一棟の売却です。
共有持分のアパート一棟を売却するためには、共有者全員の同意を得ることが前提となります。
共有持分は不動産の購入の際、共有者ごとの出資額ごとに割合が決まる形です。
出資額の割合 | 共有持分 |
---|---|
名義人A:50% 名義人B:50% |
名義人A:2分の1 名義人B:2分の1 |
名義人A:60% 名義人B:40% |
名義人A:5分の3 名義人B:5分の2 |
名義人A:40% 名義人B:30% 名義人C:30% |
名義人A:5分の2 名義人B:10分の3 名義人C:10分の3 |
名義人A:40% 名義人B:30% 名義人C:20% 名義人D:10% |
名義人A:5分の2 名義人B:10分の3 名義人C:5分の1 名義人D:10分の1 |
名義人のうち、たった一人でも売却に反対するようであれば、アパート一棟の売却は認められません。
ちなみに相続の際に共有分割にてアパートの名義人になった場合にも、共有持分が適用されます。
分割方法 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
現物分割 | 相続人の数に応じた分割 ※相続人2人⇒2分の1 ※相続人3人⇒3分の1 |
・相続人全員に公平な分割が可能 ・相続人ごとの相続税の負担が軽減される ・測量費用などが生じる可能性 |
代償分割 | 相続人のうち1名が土地の所有者になる 他の相続人には現金にて分割 |
・相続人全員に公平な分割が可能 ・土地をそのままの形で残すことができる ・不動産評価額を算定する必要がある |
換価分割 | 土地の売却後に得た売却金額を相続人全員で均等に分ける | ・相続人全員に公平な現金での分割が可能 ・売却の際に所有権移転登記が必須となる ・売却金額によっては譲渡所得税の納付も |
共有分割 | 相続人の全員で土地を共有する ※特定の所有者を決定しない |
・土地をそのままの形で残すことができる ・相続人全員が承諾しないと売却できない |
第三者への共有持分のみの売却
共有名義のアパートを共有持分のみ、第三者に売却するやり方もあります。
共有者の同意が必須項目ではない点が特徴です。
とはいえ、トラブルを回避するためにも、共有者には共有持分の売却について相談や報告をしておくことをおすすめします。
共有持分のみの売却は不動産会社の買取が現実的
仮にアパートの共有持分のみを購入したとしても、活用するためのハードルが高いのは否めません。
ほかの共有者からの同意を得ることが、活用するための条件となるためです。
活用方法 | 活用するための条件 |
---|---|
共有持分のアパートを賃貸物件にする | 過半数の共有者からの同意 |
共有持分のアパートを売却する | 共有者全員の同意 |
共有持分の土地部分への建築 | 共有者全員の同意 |
そのため、第三者への共有持分のみの売却は、不動産会社の買取が現実的な方法と言えるでしょう。
不動産会社の買取の場合、仲介手数料が発生しません。
売買価格 | 計算式 |
---|---|
200万円以下 | 売買価格×5%+消費税10% |
200万円超~400万円以下 | 売買価格×4%+2万円+消費税10% |
400万円超 | 売買価格×3%+6万円+消費税10% |
ただし不動産会社の買取を選んだ際には、売却金額が周辺の実勢価格よりも割安になりがちです。
その点を踏まえた上で、共有持分のみの買取を検討してください。
ほかの共有者への共有持分の売却
ほかの共有者にアパートの共有持分を売却する方法もあります。
共有持分を購入したほかの共有者には、持分割合が増える点が大きなメリットです。
ある程度資金に余裕のある共有者に相談してみると良いかもしれません。
ほかの共有者への共有持分の売却は価格の設定に注意
ほかの共有者への共有持分の売却の注意点として、売却価格の設定があげられます。
周辺の相場価格と照らし合わせてから、妥当と思われる価格を決めましょう。
共有持分を不動産鑑定士などに確認してもらうのもひとつのやり方です。
ちなみに、あまりにも周辺相場と比べて安すぎる場合には、贈与として疑われるリスクも生じます。
「贈与」として扱われた際、贈与税の納付対象となるかもしれません。
贈与税の課税価格は、基礎控除額110万円を差し引いた金額です。
年間の贈与金額が110万円以内で収まれば、贈与税を納める必要はありません。
基礎控除後の課税価格 | 贈与税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
※一般財産贈与用(一般税率)
共有持分のアパート売却に関する税金(譲渡所得)
共有持分のアパート売却に関する税金として、譲渡所得があげられます。
譲渡所得は、購入金額よりも売却金額が上回った場合に得られる利益(売却益)です。
譲渡所得は次の計算式にて算出されます。
譲渡所得=売却金額-(取得費+譲渡費用)
不動産の譲渡所得は所有期間に応じた税率が採用されています。
長期譲渡所得 | 短期譲渡所得 | |
---|---|---|
不動産の所有期間 | 5年超 | 5年以内 |
税率 | 20.315% ※所得税:15% ※復興特別所得税:0.315% ※住民税:5% |
39.63% ※所得税:30% ※復興特別所得税:0.63% ※住民税:9% |
購入後5年以内なら短期譲渡所得、5年と1日以上が経過していれば長期譲渡所得です。
売却金額が購入金額を下回った場合には、確定申告をしなくても問題ありません。
ただし、給与所得などとの損益通算が適用される可能性があるため、確定申告を済ませることで所得税や住民税の還付金の受け取り対象となり得ます。
まとめ
ここまで、共有持分のアパートを売却するための3つの選択肢について紹介してきました。
いずれの方法を選ぶとしても、必ず共有者(名義人)には売却の件を相談しておいたほうが無難です。
当記事が、共有持分の不動産の売却を検討している方の参考になることを願います。