賃貸物件として貸し出している不動産の中には、借主の問題によっていわゆる「ゴミ屋敷」と化しているケースも珍しくありません。
ゴミ屋敷は放置するとさまざまな問題を生じることになりますが、いくらオーナーといっても簡単にこの問題を解消することはできないのです。
そこで今回は、貸している物件がゴミ屋敷化した場合の解決プロセスについて解説します。
ゴミ屋敷を放置するリスク
ゴミ屋敷に対しては簡単には手出しすることが難しいという側面はありますが、それでも放置してしまえば数多くの問題を生じさせることになるでしょう。
悪臭問題
1つ目の問題は「悪臭」です。
ゴミ屋敷には数多くの生ごみが収容されており、これが放置されるとその期間に応じて我慢できないレベルの悪臭を放つことになります。
本来であればその部屋の住人が最も被害を被るはずなのですが、それでもゴミを放置され続けると次第に悪臭のレベルが上昇してしまい、周辺にも悪臭が及んでしまう可能性があるのです。
悪臭に悩む近隣住民は洗濯物を外に干すことができないなどの被害も被ることになり、物件のオーナーとして数多くのクレームに対処しなければならなくなるでしょう。
害虫問題
2つ目の問題は「害虫問題」です。
ゴミが一か所に集まってしまえば、それをエサにする害虫が集まる結果になります。
また、その害虫をエサにする害獣も集まることになり、害獣のフンが周囲に巻き散らかされてしまうといった問題を生じることになるでしょう。
害虫や害獣の増加は健康面でも大きな被害をもたらすことになり、周辺にも拡散することで近隣住民に大きな迷惑が掛かります。
これも悪臭問題と同様に物件のオーナーに対してもクレームが集まることになり、その対処に追われることになるでしょう。
火災リスクの上昇
3つ目の問題は「火災リスクの上昇」です。
ゴミ屋敷に溜まっているゴミの多くは可燃性であり、たとえばコンセントなどから発火してしまうと可燃性のゴミに火が燃え移って大規模な火災に発展しやすくなります。
戸建て住居の場合はもちろん、集合住宅の場合だと近隣に火災の影響が及びやすくなり、場合によっては火災による死者が発生するような事態になるでしょう。
そうなれば修繕費用が高額になりますし、場合によっては「ゴミ屋敷を放置して火事が起きて死者が出た」として噂されたり、訴えられて裁判沙汰になってしまうことも考えられます。
住人の退去
4つ目のリスクは「住人の退去」です。
アパートなどの集合住宅の一室がゴミ屋敷化してしまうと、害虫や悪臭などの被害が隣室など周辺にも及んでしまいます。
近隣住民の生活の質は大幅に落ち込んでしまい、生活が不快になっている状況を放置されていることを理由に退去されてしまうこともあるでしょう。
賃貸に出している以上、借りてもらわなければ収入がなくなってしまい、物件の固定資産税により収支が悪化してしまいます。
ゴミ屋敷の問題を解消する方法
ゴミ屋敷の問題を放置することにより、さまざまなトラブルの原因になる可能性があることがわかります。
では、貸している物件がゴミ屋敷化した場合には、どのような対処が必要になるのでしょうか。
トラブルにならないように慎重に対応する
ゴミ屋敷化している賃貸物件の問題を解消するためには、慎重に行動することが重要です。
まず「ゴミを片付けろ」みたいな張り紙をすることですが、これは名誉棄損などの問題がありますのでいけません。
次に「勝手にゴミを片付ける」ことですが、一応ゴミといっても廃棄するまでは所有権があるものですので、所有権の侵害に問われる可能性があるためこれもNGです。
では、どうすれば良いのかというと、書面の郵送・投函にてゴミの片づけ要請と、それに応じなかった場合の契約解除・退去を迫ることが現実的で安全な方法となります。
書面の投函であれば第三者の目に触れるはずはないので名誉棄損には当たりませんし、一方的な所有権の侵害にも相当しません。
書面は「いついつまでにゴミを片付けるように、守られなければ契約解除で退去してもらう」という内容を、証拠として残すために内容証明郵便で郵送することが重要です。
この通知を無視した場合は契約解除の要件を満たすケースが多く、そうなれば指定した期日以降は不法占拠に相当しますので、罪状としては不退去罪になりますので警察の協力を得ることが可能になります。
退去後の清掃費用は誰が負担する?
上記のプロセスを経てゴミ屋敷の主に退去してもらうことに成功しても、まだゴミ屋敷自体の問題が残っています。
大量のゴミを処分するために業者を手配する必要がありますし、室内の清掃についても清掃業者を、場合によっては特殊清掃を手掛けている専門業者を手配しないと原状回復できないケースもあるでしょう。
これには相応の費用がかかりますが、賃貸として収入を得る以上は普通に住めるレベルの状態まで部屋の状態を回復させないことには、次に進むことができません。
ここで問題になるのは「原状回復にかかった費用は誰が負担するべきなのか?」ということでしょう。
ガイドラインでは「通常使用の範囲を超えた被害の回復は借主が負担する」と示されており、ゴミ屋敷化した影響による被害を原状回復するための費用については、多くの場合はこれに該当します。
請求権があるという強みがあるとはいえ、では実際にすべてのケースにおいて原状回復費用を元借主に請求できるのかといえば、そうでもないでしょう。
ゴミ屋敷の状態を放置するような借主の場合だと、経済的に余裕がない人も少なくありません。
要するに「払えないものは払えない」という状況であり、やり方次第では裁判に発展して差し押さえなどの手段をとれるかもしれませんが、裁判等にかかる費用は高額であり、それならば清掃費用を自身で負担したほうが安上がりで済むというケースも多いのです。
そのあたりは簡単な話ではありませんので、場合に応じて弁護士などの専門家に相談して、最適な方法で解決してください。
まとめ
ゴミ屋敷を放置すると、物件のオーナーとして多くのトラブルに直面することになるでしょう。
対処方法を間違えると余計な問題を引き起こしてしまう可能性がありますので、冷静に正しい方法を選択して、毅然とした態度で問題に対応してください。