家主都合の立ち退きの際には、敷金が戻ってくることがほとんどです。
ただし、原状回復やハウスクリーニング費用が差し引かれる可能性があります。
未払いの賃料を敷金と相殺するケースも想定されるでしょう。
ここでは、立ち退きの際に敷金が戻ってくるための3つの条件についてご紹介します。
・そもそも敷金とは?
・敷金と礼金の違い
・立ち退きの際に敷金が戻ってくるための3つの条件
・立ち退き料と敷金は別枠で支払われる
・国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
そもそも敷金とは?
敷金は賃貸契約を結ぶ際に、物件の所有者(オーナー、大家さん)に対する賃料を保証する目的で納める費用です。
退去する際の原状回復費用に充てる用途も含まれています。
敷金は、賃貸物件の退去時には返還されるのが基本です。
賃料の1ヶ月分、または2ヶ月分を敷金として設定するパターンが多いかと思われます。
たとえば賃料が6万円で2ヶ月分の敷金(12万円)の場合、退去時に戻ってくる敷金は次のとおりです。
返還される敷金 | |
---|---|
原状回復費用なし | 120,000円 |
原状回復費用あり | 120,000円-原状回復費用 |
賃料未払い(1ヶ月分) | 60,000円 |
賃料未払い(2ヶ月分) | 0円 |
敷金が全額返還されるためには賃料を滞りなく納めて、なおかつ原状回復費用が発生しないことが条件です。
敷金と礼金の違い
賃貸物件の初期費用のひとつに礼金があげられます。
物件情報に「敷2・礼1」と表示されている場合、敷金が賃料の2ヶ月分、礼金が賃料の1ヶ月分ということです。
礼金は物件のオーナーへの、文字通り「お礼」の意味で納められます。
そのため敷金と異なり、退去時に返還されることはありません。
立ち退きの際に敷金が戻ってくるための3つの条件
立ち退きの際に敷金が戻ってくるためには、以下の3つの条件をクリアする必要があります。
・毎月の賃料を滞りなく納める
・経年劣化以外の汚損や破損がない
・規約を遵守する
毎月の賃料を滞りなく納める
前述したように、敷金は賃料の未払い分を保証する目的で納められます。
立ち退きの際に敷金を全額返還したい方は、毎月の賃料を滞りなく納めることが前提です。
経年劣化以外の汚損や破損がない
入居した物件内に経年劣化以外の汚損や破損がないことも、敷金の全額返還の条件です。
ただし、どこまでが経年劣化なのか?のボーダーラインは、オーナーや管理会社ごとに異なるため明確ではありません。
マメに掃除をする、ゴミは収集日ごとに捨てることを心がけましょう。
規約を遵守する
「釈迦に説法」のように感じるかもしれませんが、規約を遵守することも大切です。
たとえばペット禁止の物件でペットを飼っている場合、規約違反の扱いとなります。
部屋の臭いで判明しやすいため、退去時に違約金を請求されるかもしれません。
規約違反として想定されるものを次の表にまとめてみました。
規約違反の例 | 内容 |
---|---|
賃料の未払い(長期間) | 賃料が3ヶ月以上支払われていない |
契約時の居住者数と異なる | 単身者で契約したが、無断で恋人などを住まわせる |
ペット禁止 | ペット禁止にもかかわらず、無許可でペットを飼っている |
物件の使用目的 | 居住用で契約したがオフィスや店舗として使用している |
犯罪行為 | 詐欺などの犯罪目的で物件を使用している |
物件の又貸し | 契約者ではない人に無断で物件を又貸ししている |
騒音 | テレビやオーディオ、楽器などを大音量で鳴らす |
意図的な汚損、破損 | 壁紙への落書き、壁や床などを叩いて壊す |
ちなみに強制退去となった際には、敷金や立ち退き料の受け取り対象外です。
立ち退き料と敷金は別枠で支払われる
物件のオーナー都合の立ち退きの場合、入居者に対して立ち退き料が支払われることが一般的です。
立ち退き料は、賃料の5ヶ月分から6ヶ月分が目安とされています。
賃料 | 立ち退き料の目安(5ヶ月分) | 立ち退き料の目安(6ヶ月分) |
---|---|---|
50,000円 | 250,000円 | 300,000円 |
60,000円 | 300,000円 | 360,000円 |
70,000円 | 350,000円 | 420,000円 |
80,000円 | 400,000円 | 480,000円 |
90,000円 | 450,000円 | 540,000円 |
100,000円 | 500,000円 | 600,000円 |
敷金が返還される場合、立ち退き料とは別枠で支払われることになります。
賃料 | 立ち退き料の目安(6ヶ月分) | 敷金(賃料2ヶ月分)
※原状回復費用なし |
---|---|---|
50,000円 | 300,000円 | 100,000円 |
60,000円 | 360,000円 | 120,000円 |
70,000円 | 420,000円 | 140,000円 |
80,000円 | 480,000円 | 160,000円 |
90,000円 | 540,000円 | 180,000円 |
100,000円 | 600,000円 | 200,000円 |
立ち退き料は、次の移転先の費用(引っ越し代、初期費用)を補填する意味合いで支払われると捉えておきましょう。
ただし、立ち退き料の支払いは法律で定められているわけではありません。
入居者の規約違反などの場合には、立ち退き料が発生しないケースも存在します。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
立ち退き時に限らず敷金の返還を左右するのは、原状回復の有無であるのは間違いありません。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によりますと、原状回復=入居時の状態に戻すことではないと明文化されています。
・入居者の過失による汚損および破損
・入居者の管理の不備による汚損および破損
通常の生活を送った上での経年劣化によるものは、原状回復費用の対象外です。
立ち退き交渉の際にトラブルを招かないためにも、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参照しながら、話し合いを進めていくことをおすすめします。
参考資料
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
まとめ
ここまで、立ち退きの際に敷金が戻ってくるための3つの条件について紹介してきました。
移転後にかかる費用を軽減するためにも、立ち退き料や敷金はきちんと受け取っておきたいものです。
とはいえ、立ち退きの状況や交渉によっては、そうした費用が発生しないことも想定されます。
まずはご自身が立ち退き料や敷金を受け取れる対象であるか?否か?を確認することから始めてみましょう。