不動産のオーナーは、物件の借主や物件の近隣住民、物件の共有者などさまざまな人と不動産関連で関係性を持つことになります。
トラブルなく不動産運営を進められれば良いのですが、権利関係などの問題があるので時には不動産関連で問題が生じることもあるでしょう。
そこで今回は、不動産紛争の種類と解決方法について解説します。
不動産紛争の種類
一口に「不動産紛争」といっても、さまざまなタイプのトラブルがあります。
不動産紛争の種類を知っておくことで、オーナーとして将来的にどんなトラブルが起こり得るかを把握でき、紛争の防止に役立てることができるでしょう。
借主とのトラブル
よくあるのが「物件の借主とのトラブル」です。
たとえば「家賃」に関することだけでも、家賃の未払いに関する問題や、家賃の増額・減額交渉のように、さまざまなトラブルがあります。
大きな問題に発展する可能性があるトラブルとしては、借主に対して立ち退きを要求するケースですが、不動産の借主は借地借家法という法律でその権利が大きく守られており、契約義務違反などの契約解除要件がなければ立ち退き要求に応じる必要はなく、定期借家契約でなければ契約更新を拒否することもできません。
設計業者・施工業者とのトラブル
建物については、その設計を担当する業者や、施工を担当する業者とトラブルになることもあります。
物件を新築または譲渡した場合、その後の一定期間については施工業者が契約不適合責任を負担し、もし引き渡し後に物件に不具合があった場合は修繕などを行う義務を負うのです。
しかし、設計・施工業者との紛争では契約不適合責任に基づく義務の存否や代金の減額、損害賠償請求や契約解除などが争われるケースがあり、お互いに弁護士をいれて訴訟問題に発展するケースも多く見られます。
区分所有建物の建て替えトラブル
「区分所有建物」とは、マンションやビルのように建物自体は1つの物件であっても、マンションの一室のように所有権を区分分けしてしている物件のことです。
区分所有建物は区分所有法に基づいて建替え決議を行うことにより、一部の区分所有者が反対していたとしても物件の建て替えを断行できます。
建て替えに反対している区分所有者は賛成している区分所有者に対して自身が保有する区分所有権を売り渡すことになりますが、その際の売却価格を巡って紛争が発生することも少なくありません。
また、そもそも建て替え決議自体が違法や無効であると主張することで、反対派の所有者が区分所有権の売り渡しを拒否することもあります。
区分所有建物の建て替え問題は各区分所有者の権利に大きな影響を及ぼすため、紛争が深刻化して解決までに相当な時間を要するケースも多いです。
不動産管理に関するトラブル
マンションのように物件の管理責任者がいる場合において、入居者と管理者の間でトラブルが起こることも少なくありません。
管理責任が不十分であることを入居者側が訴えたり、管理規約に違反する入居者がいることをほかの入居者からクレームが入ることもあります。
多くの場合はほかのトラブルほど深刻な問題にならないでしょうが、トラブルの内容によっては入居者同士および入居者と関係性が悪化する可能性もあるので注意が必要です。
近隣住民とのトラブル
入居者と近隣住民との間でトラブルが起こると、近隣住民の怒りの矛先が物件のオーナーに向けられることも珍しくありません。
よくあるのが騒音問題や悪臭問題、ゴミ屋敷問題の放置などが該当し、対処方法次第では近隣住民との関係性が悪化する可能性があります。
共有不動産についてのトラブル
1つの物件を複数の名義人で不動産の場合、各名義人は自身が保有する持分についての処分権や、不動産の分割請求などを行使することができます。
また、共有不動産は全員の同意がなければ売却できず、持分を売却することで解決することもできますが、そういった取引において各名義人での同意形成が難しくなることも少なくありません。
オーナー個人の問題
不動産紛争は主に入居者などの関係者が相手になることが多いのですが、オーナーの身内での問題が大きなトラブルに発展するケースもあります。
たとえば「相続」「夫婦間での名義・権利の問題」などが挙げられ、解決方法次第では入居者などのほかの権利者に対して迷惑がかかることもあるでしょう。
不動産紛争の解決方法
不動産は権利関係者が多く、その価値や規模の大きさなどの理由からもトラブルになってしまうと面倒なことになりかねません。
では、もし不動産関連で入居者や近隣住民とトラブルになってしまったら、どういった解決方法があるのでしょうか。
もし、当事者間の話し合いで解決できなかった場合は、以下の方法を利用することを検討してください。
民事調停
調停委員と呼ばれる有識者が間に入って当事者双方の言い分を公平に聞き取ったうえで調整を検討し、すべての当事者が納得できる解決案の作成および提示を目指す手法です。
裁判官が作成する調停案についてすべての当事者が同意した場合、調停成立となって紛争が解決します。
なお、離婚における財産分与や遺産分割のように、親族・相続に関連する不動産紛争は「家事調停」の範囲です。
民事訴訟
当事者間での話し合いが成立する見込みがない場合や、民事・家事調停が不成立に終わった場合は、民事訴訟を起こして紛争の解決を目指すことになります。
民事訴訟では当事者双方が裁判所に証拠を提出し、それぞれの主張の立証を展開するという流れです。
民事訴訟を起こすうえでは対立構造の下で厳密に手続きが進められることになるので、法律上の要件を踏まえてしっかりと必要書類等の準備を整えることが大切です。
弁護士に相談
どの手段での解決を目指す場合であっても、より迅速に紛争を解決に導くためには弁護士の力を借りることをおすすめします。
たとえば当事者間で話し合って解決を目指す場合でも、弁護士がいれば法的な要件のしっかりとした説明が可能になりますし、お金の話になれば相場を説明したうえでその案件における納得できる金額の提示が可能です。
法律の専門家である弁護士が間に入ることで当事者双方がその話に納得しやすくなり、調停や訴訟に発展させるまでもなく不動産紛争を解決できる可能性が高くなります。
まとめ
不動産紛争は、内容によっては解決までに相当な苦労を強いられることになり、体力も精神も大きく削られることになるでしょう。
弁護士に依頼することで当事者間での話し合いで解決できる可能性が高まりますし、調停や訴訟に移行してもサポートを受けることにより最低限の負担で紛争を解決に導くことができます。