再建築不可物件には、建築基準法の「接道義務」を果たしていない建物が該当します。
接道義務とは幅員4メートル以上の道路に対して、土地が2メートル以上接していることです。
ここでは再建築不可物件を再建築可能とする、セットバックのメリットと注意点をご紹介します。
再建築不可物件を再建築可能にするセットバックとは?
セットバックとは自己所有の土地の一部を道路に変えることで、前面の道路の幅員を4メートル以上に設定する方法です。
具体的には道路に接している部分を建物側に後退させます。
道路の幅員が3.7メートル、間口が5メートルの土地の場合、セットバックが必要な距離および面積は次のとおりです。
セットバックが必要な距離
(4-3.7)×1/2=0.15メートル
セットバックが必要な面積
0.15×5=0.75㎡
セットバックが必要な距離の計算式で用いられる「4」とは、接道義務の基準となる「幅員4メートル」が基になっています。
「2分の1」の根拠は、セットバックを道路の両側で実施する点です。
すでに向かい側の土地がセットバック済み
すでに向かい側の土地がセットバック済みであれば、実際にセットバックする距離や面積が異なります。
同じように道路の幅員3.7メートル、間口5メートルで計算してみましょう。
セットバックが必要な距離
4-3.7=0.3メートル
セットバックが必要な面積
0.3×5=1.5㎡
片側の道路に対してセットバックが完了しているため、「2分の1」が適用されません。
セットバックを実施する前には、必ず向かい側でのセットバックの有無を確認しておきましょう。
土地のセットバックの有無については、市区町村役場の「建築課」「建築指導課」「道路課」の窓口に問い合わせすることをおすすめします。
道路の向かい側が川や海、線路などの場合
道路の向かい側が川や海、線路などの場合には、自身が所有する土地のみをセットバックさせることで接道義務を満たします。
対象物を物理的に移動させられないことがその理由です。
先程の道路の幅員3.7メートル、間口5メートルで算出してみましょう。
セットバックが必要な距離
4-3.7=0.3メートル
セットバックが必要な面積
0.3×5=1.5㎡
再建築不可物件でセットバックを採用する3つのメリット
再建築不可物件でセットバックを採用することで、以下の3つのメリットが得られます。
・再建築可能な物件へと切り替わる
・道路の幅員が拡大する
・セットバック部分の固定資産税や都市計画税が非課税となる
再建築可能な物件へと切り替わる
セットバックのメリットとして、再建築不可物件を再建築可能な物件へと切り替わる点があげられます。
・平屋を2階建てや3階建てにする
・土地の一部をアパートなどの賃貸物件に
・増改築後に二世帯住宅にする
・地下に防音設備を施して楽器演奏用のスタジオやオーディオルームに
・1階部分をガレージやリモートワーク用に整える
再建築不可物件のままでは、建て替えや増改築が認められません。
解体後の用途も駐車場や駐輪場、資材置き場や倉庫などに限定されてしまいます。
セットバック後は資産価値が上昇する可能性があるため、売却を検討する際にも有利に働くかもしれません。
道路の幅員が拡大する
セットバック後は道路の幅員が拡大する点もメリットに含まれます。
特に自家用車の出し入れが容易になるのは確実です。
通行車両同士のすれ違い時の渋滞の緩和にも結びつくでしょう。
消防車や救急車などの緊急車両や、宅配便などのトラックもスムーズに通行できるようになります。
セットバック部分の固定資産税や都市計画税が非課税となる
セットバック済みの部分は「公共の道路」の扱いに変わるため、固定資産税や都市計画税が非課税となります。
お住まいの市区町村役場への非課税申告が必須です。
※東京都は東京都主税局
非課税申告の必要書類は以下のとおり。
・土地の登記事項証明書(登記簿謄本)
・地積測量図
・固定資産税・都市計画税非課税申告書など
詳しくはお住まいの市区町村役場にお問い合わせください。
再建築不可物件でセットバックを行う際の注意点
再建築不可物件のセットバックには道路幅の拡大などのメリットが得られる反面、次の注意点を踏まえておく必要があります。
・所有する土地の面積が縮小する
・セットバック部分は「道路」として扱われる
・セットバックの工事費用がかかる
所有する土地の面積が縮小する
セットバック後は、所有する土地の面積が縮小される点は理解しておきたいところです。
面積の縮小に伴い建ぺい率や容積率も変動するため、家屋などの建物が建築基準法の基準を満たしているか?否か?を確認することが求められます。
不明点や疑問点があるようなら、建て替えや増改築を担当する施工業者に訊ねておきましょう。
わからないことをわからないままにしておくのはトラブルの元です。
セットバック部分は「道路」として扱われる
セットバック部分は公共の「道路」としての扱いに切り替わります。
セットバック部分には植物の鉢植えや看板、フェンスや塀などの設置は認められません。
別途、所轄の警察署への道路使用許可申請が必須です。
駐停車禁止エリアの場合には、セットバック部分の駐車が道路交通法違反に抵触することも考えられます。
セットバックを実施する前には、駐車スペースの確保もチェックしておきましょう。
セットバックの工事費用がかかる
セットバックには工事費用が発生します。
お住まいの自治体によっては助成金や給付金制度が設けられていることもありますが、基本は全額自己負担です。
セットバック工事に臨む際には、お住まいの市区町村役場に相談することをおすすめします。
まとめ
ここまで、再建築不可物件にセットバックを採用するメリットおよび注意点を紹介してきました。
セットバック後は再建築可能となることから、資産価値の上昇が期待できます。
まずはお住まいの周辺環境を調査することから始めてみましょう。