再建築不可物件は、基本的に建物を建て替えることは禁止されています。
しかし、ある手法を活用することにより、再建築不可物件であっても建物を建て替える余地があることをご存じでしょうか。
そこで、再建築不可物件で建て替えをする際に活用するべき手法について解説します。
再建築不可物件で建て替えをする方法
再建築不可物件では、原則として建物を建て替えることはできません。
これは、建築基準法や土地計画法に基づいて定められている「接道義務」を果たしていないことが理由となります。
しかし、ある手法を活用することでその規制を回避して建て替えをすることが可能になるのです。
手法1「隣地の一部または全部を買い取る」
1つ目の手法は「隣地を買い取る」ことです。
接道義務に足りない接道部分を満たせるだけの隣地を買い取って自身の土地と合わせることで接道義務を満たすことができれば、再建築不可物件の指定から外れることになりますので、建物を建て替えることができるようになります。
隣地すべてを買い取る必要はなく、隣地と接している部分のうち接道部分の不足分だけ買い取ることができれば十分であるため、一部だけ買い取ることができれば最小限の費用だけで建物を建て替えるだけの土地を所有することが可能です。
ただし、「一部分だけ買い取る」というのは簡単なことではなく、隣人との買い取り交渉が必要になるでしょう。
たとえば、隣地の接道部分だけをすべて買い取ることになってしまえば、隣地が逆に接道部分がなくなってしまって再建築不可物件になってしまいます。
そうなると、隣人は再建築不可物件を抱えることになりますので、資産価値が低下して売却も難しくなってしまうでしょう。
そのため、交渉が厳しい場合は隣地をすべて買い取る必要が出てくることになります。
また、そもそも隣地が売りに出されている状況ではなく、隣人も売却を検討していないとなれば、買取自体が難しくなってしまうでしょう。
そのため、隣人が土地を売りに出したいと考えていることが前提の手段となります。
手法2「土地を等価交換する」
2つ目の手法は「土地を等価交換する」ことです。
これは上記の土地買取の状況と似ている内容ではありますが、相手の土地の一部の所有権を得る代わりに、自身が保有する土地の所有権の一部を相手に譲渡し、交換するという内容になります。
接道義務に必要な土地を相手から譲渡してもらう代わりに、自身が保有する同程度の価値の土地の所有権を相手に譲渡するという形式です。
土地同士の交換の場合は「固定資産の交換の特例」を受けることが可能で、これは国税庁によって定められた特例であり、これにより譲渡がなかったものとみなされることにより所得税の課税を回避できます
ただし、交換する土地の価値に差額がありその分を現金等にて交換した場合は、その金額が譲渡所得とみなされることで所得税の課税対象になるので注意が必要です。
手法3「隣接地の一部を借りる」
3つ目の手法は「隣接地の一部を借りる」ことです。
隣接地の購入や交換が難しい場合であれば、必要な土地を隣人から借りるという方法もあります。
再建築不可物件は自分の土地でなくても、通行する権利さえあれば接道義務を満たせることで建て替えが可能になるからです。
なお、隣人から土地を借りる場合には「土地賃貸借契約書」を作成する必要があります。
もし、自分たちで土地賃貸借契約書を作成するのに不安があるのであれば、司法書士に相談すると良いでしょう。
手法4「セットバックを行う」
4つ目の手法は「セットバックを行う」ことです。
セットバックとは、建物と接している道路の幅員を確保するため、所有する敷地側に道路の境界線を後退させることをいいます。
所有する不動産には、通常であれば固定資産税や都市計画税などが課税されますが、セットバックした部分は「公共の用に供する道路」として固定資産税および都市計画税は非課税となるメリットもあるのです。
しかし、セットバック下部分の土地は私的に使用することができなくなりますし、そのために必要な費用は基本的に自己負担になりますので、デメリットも多い方法となります。
ただし、セットバックにより再建築不可物件ではなくなることで、費やした費用以上に土地の資産価値が上昇する可能性もありますので、セットバックを検討する際には不動産の専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
手法5「道路の位置指定を申請する」
5つ目の手法は「道路の位置指定を申請する」ことです。
道路の位置指定は、現行で建築基準法の道路ではないものを道路に格上げするイメージであり、道路の位置指定申請が認められることで建築基準法の道路になれば建て替えができるようになります。
道路の位置申請を行う際はセットバックと同様にお住いの地域の役所への申請が必要で、建築基準法の道路に該当するのかわからない場合は役所で確認しましょう。
申請の代理が認められている場合であれば、建築士や行政書士に代理で必要書類の提出を依頼できる可能性がありますので、お忙しい場合には代理を依頼することをおすすめします。
手法6「但し書き規定の申請をする」
6つ目の手法は「但し書き規定の申請をする」ことです。
接道義務を満たしていなくても、「建築基準法43条2項2号」の内容が認められれば、例外として建て替えができるようになります。
・建築基準法第四十三条
建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。
・建築基準法第四十三条2項
前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
・建築基準法43条2項2号
その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
参考
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201
但し書き申請は自力でもできますが、求められる書類が多くて複雑な手続きが必要なので、自分で申請するのが不安ならば建築士に相談するがおすすめです。
建て替え以外にも活用法はある
再建築不可物件であっても建て替える余地はありますが、いずれも特定の条件を満たす必要があり、必ずしもその条件を満たせるとは限りません。
そんな建築不可物件であっても、活用の方法がないわけではありません。
たとえば、駐車場や家庭菜園として活用する方法がありますし、単純に不動産業者等に売却するという方法もあります。
再建築不可物件の扱いに困っているのであれば、不動産取引の専門家のアドバイスを受けて、最適な活用法を見出してください。
まとめ
再建築不可物件であっても、条件次第では建て替えができる余地はありますが、特別な条件を満たして所定の手続きを経る必要があります。
必ずしもこれを満たせるわけではありませんので、その場合はほかの活用法を見出して、再建築不可物件を遊ばせないことが重要です。