底地などの不動産を売却した際には、譲渡所得が発生する可能性を秘めています。
譲渡所得の計算式は、売却価格-(取得費+譲渡費用)です。
売却価格によっては、取得費や譲渡費用よりマイナスになることもあり得るでしょう。
ここでは、底地の譲渡所得の計算方法についてご紹介します。
底地の譲渡所得の計算方法
底地を含む不動産の譲渡所得の算出は、次の計算式が用いられます。
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得が発生した際には、翌年の2月16日から3月15日の間に、所轄の税務署宛の所得税の確定申告が必要不可欠です。
売却価格が取得費や譲渡費用よりも下回った場合には、確定申告をしなくても問題ありません。
ただし、ほかの事業所得や給与所得などとの損益通算が適用されるため、確定申告後に所得税の還付金を受け取れる可能性があります。
取得費の計算方法
取得費は2種類の計算方法が存在します。
実額法と概算法です。
この2つの方法で算出した数値のうち、金額の大きいほうが取得費とされます。
取得費の算出方法 | 内容 |
---|---|
実額法 | 不動産の取得費用より減価償却費を差し引く計算法 取得費用には、不動産の購入金額や仲介手数料、建物の建築費用などが該当します |
概算法 | 譲渡収入金額(売却価格)×5%で算出 |
減価償却費
取得費を実額法で算出する際に用いられる費用です。
不動産の場合には、建物に対して発生します。
減価償却費の定額法の計算式は次のとおりです。
建物の購入代金×0.9×償却率×経過年数
※経過年数は6ヶ月未満は切り捨て、6ヶ月以上は1年として算出
減価償却率は建物の構造ごとの耐用年数と、事業用か?非事業用か?で異なります。
建物の構造 | 非事業用 | 事業用 |
---|---|---|
木骨モルタル造 | 耐用年数:30年 償却率:0.034 |
耐用年数:20年 償却率:0.050 |
木造 合成樹脂造 |
耐用年数:33年 償却率:0.031 |
耐用年数:22年 償却率:0.046 |
金属造 ※骨格材の肉厚が3mm以下 |
耐用年数:28年 償却率:0.036 |
耐用年数:22年 償却率:0.046 |
金属造 ※骨格材の肉厚が3mm超4mm以下 |
耐用年数:40年 償却率:0.025 |
耐用年数:27年 償却率:0.038 |
金属造 ※骨格材の肉厚が4mm超 |
耐用年数:51年 償却率:0.020 |
耐用年数:34年 償却率:0.030 |
れんが造 石造 ブロック造 |
耐用年数:57年 償却率:0.018 |
耐用年数:38年 償却率:0.027 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 |
耐用年数:70年 償却率:0.015 |
耐用年数:47年 償却率:0.022 |
譲渡費用の例
不動産の譲渡費用には、売却を目的として直接支払った費用が該当します。
譲渡費用 | 内容 |
---|---|
仲介手数料 | 不動産の売却を仲介した不動産業者に支払う費用 |
印紙税 | 不動産の売買契約書に貼付する収入印紙代 |
立ち退き料 | 賃貸物件の売却前に、居住者(借家人)に立ち退いてもらう目的で物件の所有者が支払う費用 |
解体費用 | 土地の売却前に取り壊した建物の解体費用 |
違約金 | 売買契約を結んでいる不動産を、より高額に他者へ売却するために、既契約者に支払う契約解除に伴う費用 |
名義書換料 | 借地権の売却の際、地主の承諾を得る目的で支払う費用 |
譲渡所得税率
底地の売却による課税譲渡所得が算出された後には、所有年数ごとの譲渡所得税率が適用されます。
長期譲渡所得 | 短期譲渡所得 | |
---|---|---|
不動産の所有期間 | 5年超 | 5年以内 |
税率 | 20.315% ※所得税:15% ※復興特別所得税:0.315% ※住民税:5% |
39.63% ※所得税:30% ※復興特別所得税:0.63% ※住民税:9% |
同じ土地でも2つの異なる権利「底地権」と「借地権」
底地とは、借地権が設定された土地を指す言葉です。
底地の所有者(底地権者)は借地人(借地権者)より地代を受け取り、借地人は借りた土地に建物を建てることができます。
地主 | 借地人 | |
---|---|---|
権利 | 土地の所有権 | 土地の借地権 |
どのような関係? | 借地人に土地を貸している | 地主から土地を借りている 借りた土地に戸建住宅などを建てている |
費用 | 借地人から支払われた地代を受け取る | 土地の使用料として地主に地代を支払う |
借地権の売買時 | 借地人より承諾料を受け取る | 地主に承諾料を支払う |
底地の売買 | 可能 ※買主が見つかることが条件 |
地主から購入することも可能 |
固定資産税 | 土地に対する固定資産税を納める | 建物に対する固定資産税を納める |
都市計画税 | 土地に対する都市計画税を納める | 建物に対する都市計画税を納める |
底地のみを売却することは可能ですが、売却先が限定されるのは否めません。
その理由として、借地権が長期に設定されている点があげられます。
借地権の種類 | 初回設定期間 | 更新後の期間 |
---|---|---|
普通借地権 | 30年 | 更新1回目:20年 更新2回目以降:10年 |
定期借地権(一般定期借地権) ※戸建住宅、マンション(住宅用) |
50年以上 | 更新なし 契約期間満了後は更地にして地主に返す |
事業用定期借地権 | 10年以上50年未満 ※2008年1月1日以前の場合は10年以上20年以下 |
更新なし 契約期間満了後は更地にして地主に返す |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | 更新なし 契約期間満了後は地主が建物を買取する |
一時使用目的の借地権 | 2年などの設定も可能 | 更新なし ※一時的な使用が目的のため |
底地の売却先候補3選
底地の売却先候補として、借地人と不動産投資家と不動産業者があげられます。
借地人に購入してもらう場合には、建て替えや増改築の時期が良いかもしれません。
建物と土地が組み合わさることで、金融機関のローン設定がスムーズに進む可能性が高まります。
底地の立地によっては、不動産投資家も売却先となり得るでしょう。
安定した不動産収入(地代)が魅力的に映るかと思われます。
買取専門の不動産業者も底地の売却先候補のひとつです。
相続税の納付期限などで、早期の現金化を求める方に向いています。
まとめ
ここまで、底地の譲渡所得の計算方法について紹介してきました。
売却益が生じた場合のみ、譲渡所得が発生します。
譲渡所得を得た方は、確定申告を忘れぬよう、ご注意ください。